2014年5月7日
日経ヴェリタス(5月4日~10日 24ページ ランキング&資本市場)に当社記事が掲載されました。
『上場審査に甘さ、数より質の確保を
IPOコンサルのラルク 鈴木社長に聞く
リーマン・ショック後の不振からの復調が鮮明な新規株式公開(IPO)だが、直近では初値が公開価格を下回ったり、上場間もない企業で業績予想の下方修正が相次ぐ。
IPO後につまずく企業が多くなっているのはなぜなのか。IPOの準備に特化したコンサルティング会社、ラルク(東京・中央)の鈴木博司社長に聞いた。
――昨年後半から、IPO企業の業績下方修正が相次いでいます。上場予備軍を取り巻く環境が変化しているのですか。
「未上場企業は収益を伸ばすことを最優先し、上場準備で初めて労務や財務などの管理面の拡充に直面するケースが多い。従来は上場の1年以上前からコンサルが入るのが普通だったが、リーマン・ショック後の回復局面に入ってからは、上場の半年前になって急に依頼が来るケースなどが増えている。相場の改善もあり、準備不足の企業が上場を急ぐケースが目立つ」
「上場企業は事業の状況を適切に把握し、業績予想を立てる管理体制が必要だ。下方修正が増えているのは、証券会社や証券取引所の審査がやや甘くなっているからではないか」
「上場社数の回復で、証券会社では主幹事の獲得競争が劇化している。上場準備の担当証券会社が改善を求めた点について、別の証券会社が『うちなら問題になりませんよ』と営業をかけて主幹事の座を奪い、その通り上場できてしまうようなこともある」
「上場準備を指導する人員も不足している。証券会社、取引所はIPOの“質”の確保に真剣に取り組むべきだ」
――14年の新規上場社数は70~80社と昨年(54社)を上回るとの見方が強いですが。
「今年は秋にまとまった数の企業が上場を予定している。景気や相場の行先きに不透明感も出ているが、これが予定通りに上場できるかが今後のカギになる。上場を希望する企業は多く、今後2年程度は回復傾向が続くだろう。予備軍では地価上昇などを追い風に地方の不動産関連が目立つ。ネットやIT(情報技術)系など幅広い業種でIPOが増えるだろう」
「IPO社数の増加で、証券会社ではIPOの営業・指導体制を拡充する動きも目立つ。下方修正の連発を受けて取引所も何らかの改善策を講じるはずだ。IPOが今後健全性を保ちながら回復するためにも、今後の取り組みに期待したい」
――ラルクでは今年に入り、IPO予備軍向けの人材仲介業を始めました。
「上場を希望する企業の増加で経理や資金調達を担う専門人材が逼迫している。これまでも上場支援の一環として、様々な人材を紹介することはあったが、需要の拡大を受け1月に免許を取得して事業化した。ただ足元では需要が大きすぎて紹介が追いついていないのが実情。会計や会社法の知識を持つ適切な人材は限られている」
「日本はまだ大企業志向が根強いことも人材確保の壁になっている。自ら成長企業に飛び込む人材がもっと増えれば、IPOの質の向上にもつながるだろう」 』